看護師という仕事は、単に患者さんに対する技術的ケアを行っていればいいというものではありません。
同僚や先輩ナース、医師、患者さんとのコミュニケーションが必要不可欠な仕事です。
でも、
・どのようなコミュニケーションをとるのが適切かわからない
・先輩や医師、患者さんとどう接すればうまくやっていけるかわからない
と悩む新人看護師も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、新人看護師がさまざまな人とうまくやっていくためには、
どのようなコミュニケーションをするのが良いのか「コツ」をまとめました。
①チームの一員として、うまくやっていくコツ
②プリセプターとうまく付き合うコツ
③医師とうまく付き合うコツ
④患者さんとうまく付き合うコツ
⑤ストレス・プレッシャーにうまく対処するコミュニケーションのコツ
の5つに分けて紹介します。
目次
【①チームの一員として、うまくやっていくコツ】
ナースの業務は、チームワークが必要不可欠です。
チームの一員としてやっていくためには、先輩や同僚と適切なコミュニケーションをとって、信頼関係を築いていく事が重要です。
そのための基本中の基本のポイントを3つご紹介します。
最低限、この3つだけでも必ず守るようにしましょう。
(1)挨拶・返事はきちんとする
チームワークに必要不可欠なのは、チームのメンバー同士できちんと声を掛け合い、意思の疎通をすることです。
そのためにも、挨拶・返事は非常に重要です。
たかが挨拶と思うかもしれませんが「おはようございます」と元気よく挨拶するだけでも、先輩はあなたに良い印象を抱くはずです。
また、何か連絡や指導を受けたら「はい、わかりました」という返事をしましょう。
不明点があれば正直に「○○の部分についてもう少し詳しく教えていただけませんか」と言うようにしましょう。
教える側にとって、相手からのリアクションが無いのは不安になるものです。
返事が無いと、自分が教えた事や連絡事項が新人にきちんと伝わっているのかどうかが分からないからです。
円滑なコミュニケーションのためにも、挨拶・返事は欠かさないようにしましょう。
(2)時間や期限はしっかり守る
チームとしてやっていくうえで、時間や期限を守ることはとても大切です。
時間にルーズだと、チーム全体に迷惑をかけてしまうことになります。
・出勤時間
・病棟スケジュール
・患者さんの検査時間
・書類提出期限
など、守るべき時間・期限はたくさんあります。
「いつまでにやらなければならないのか」をしっかりメモにとって把握し、時間や期限を破ることの無いように心がけましょう。
(3)正しい言葉遣い
先輩や同僚とは、適切な距離感を保ちつつコミュニケーションを取るべきです。
そのためにも、正しい言葉遣いを心がけましょう。
特に、先輩に対してのタメ口は厳禁です。
いくら寛容で優しい先輩だからと言って、マナーの無い話し方をされたら気分を害するでしょう。
どんなに先輩・同僚と仲良くなろうと、仕事の場であるということを忘れずに。
勤務中は正しい言葉遣いをするよう心がけましょう。
【②プリセプターとうまく付き合うコツ】
新人ナースを時に厳しく、時に優しく教育してくれるのが「プリセプター」です。
右も左も分からない状態の新人ナースが職場や業務に適応できるよう、サポートしてくれる母親的役割の先輩ナースですね。
マンツーマンで指導が行われるだけに、プリセプターとはうまく付き合っていきたいと思うものの、
新人ナースの多くがプリセプターとのコミュニケーションに悩んでいます。
プリセプターとうまく付き合う一番のコツ、それは、プリセプターの気持ちを理解することです。
プリセプターは、入職して3~4年程度のナースが務めるケースが多いです。
なぜそのような若手ナースが選ばれるかと言うと
・新人と年齢も近いので、相談がしやすいように
・新人教育を通じて、プリセプター自身の成長にも繋げるため
といった理由があるからです。
3~4年目というと、自分の仕事にはある程度慣れてきたころでしょう。
しかし「人に教える」となると、分かっていたつもりのことでも、なかなか難しいもの。
さらに、場合によっては他の先輩から
「あなたが担当している新人の○○さん、××を頼んでもできていなかったわよ。ちゃんと教えているの?」
「あなたがきちんと新人を育てないとチームがダメになるのよ?」
など、叱責されてしまうこともあるのです。
そう、プリセプター自身も、不安な気持ちと戦いながら新人ナースの教育をしてくれているのです。
「自分だって働いてまだ3~4年なのに、人に教えるなんてできない…」
「でも私がちゃんと教えないと、チームにも迷惑をかけてしまう」
「どうしたら後輩を伸ばしてあげられるんだろう」
「精神的なフォローもしてあげなくちゃ…」
いろいろなことに悩み、試行錯誤しながらプリセプターという役目を果たしてくれているのです。
新人ナースのあなたは、プリセプターに厳しく叱責されて落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、そのときプリセプターはどんな気持ちだったのでしょうか。
もしかしたら、プリセプターも気持ちに余裕がなく、つい厳しい言葉が出てしまったのかもしれません。
あるいは、厳しい言葉であなたの自立を促したかったのかもしれません。
プリセプターも悩んでいること、自分のことを思って叱ってくれていることを理解できれば、きっとうまくやっていけるはずです。
【③医師とうまく付き合うコツ】
ナースとして働く上で、医師とのコミュニケーションは避けて通れないもの。
しかし、どうやったら医師とうまくやっていけるか悩んでしまうナースは少なくないでしょう。
医師とうまく付き合うコツは、医師がどんな役割を果たす存在なのかを理解しておくことです。
アメリカの学者であるミリアム・Mジョンソンと、ハリー・W・マーチンは、社会学的立場から医師、ナース、患者の三者の関係を分析しています。
それによれば、医師は「手段的専門家」であり、看護師は「表出的(社会的・感情的)専門家」とされています。
医師は、患者の抱える問題の解決を第一に考えます。
対して、看護師は患者の社会的・感情的反応に対して心を配る存在です。
患者さんの話し相手にもなるなど、精神的サポートなども担うのが看護師です。
看護師は、医師が考える「問題解決」の手段について理解しつつも、患者さんの気持ちなども汲み取って、医師/患者さんの橋渡しをするような役目が求められるのです。
ですから医師に対して、
「患者さんやナースの気持ちも考えないで無茶なこと言って…!」
などとイライラしてしまうのではなく、あくまでも医師は問題解決を第一に考えて発言/行動しているのだという前提で話を聞くことができるとよいでしょう。
医師と患者さん、両者の意図や気持ちを理解して、両者をつなぐ役割を果たせるようになることが大切です。
【④患者さんとうまく付き合うコツ】
ナースは、患者さんに対して技術的なサポートだけしていればいいわけではありません。
バイタルチェックや点滴といった「診療補助」の際も、「療養上の世話」の際も、患者さんとのコミュニケーションは必須になります。
患者さんとうまく付き合うコツは、患者さんの気持ちを理解し対応しつつ、自分の仕事も進行できるようにうまくバランスをとることです。
例えば、こんなケースを考えてみましょう。
あなたは、ある患者さんから「療養上の世話」を求められました。
患部をさすって痛みを和らげるお世話です。患者さんも辛い痛みが和らいで嬉しそうにしています。できるだけ長く、さすっていてほしいようです。
でも、あと2分ほどで別の仕事を開始しなければなりません。
さて、こういった場合あなたならどうしますか?
仮に、患者さんに対し「すみませんもう別の仕事に移らなければならないので」とだけ伝えたとしましょう。
患者さんはあなたに対して「冷たい」という悪印象を抱きかねません。
一方、患者さんがうれしそうにしているからといって、始めなければならないはずの別の仕事を疎かにしてしまうのも良くないですよね。
こういった場合ベストな対応は、まず別のナースや上司に
・患者さんがもう少し長い時間の世話を求めているが、別の仕事の開始を延期して自分がもう少し世話を続けることはできないか
・もしそれが無理なら、誰か代わりに世話をできる人はいないか
を相談してみましょう。
それでも無理だったら患者さんに
・いま世話を続けられない理由
・次は○日の○時に来るから待っていてほしい
というように、事情の説明+代替案(または次の対応の予定)を伝えて安心させてあげるべきです。
患者さんは、病気や怪我で苦しい思いをしているもの。
できる限りの対応を試みて、患者さんの気持ちに寄り添いつつ、全体の仕事がまわるように、バランスをとることを心がけましょう。
【⑤ストレス・プレッシャーにうまく対処するコミュニケーションのコツ】
ナースとして働き始めると、さまざまな場面で多くのストレス・プレッシャーを感じることになると思います。
誰もが悩んでしまう問題ですが、ストレス・プレッシャーにうまく対処しつつ働くには、どうしたらよいのでしょうか?
そのためのポイントを3つまとめました。
(1)同僚と悩みを分かち合おう
同僚とのコミュニケーションはとても大切です。
単に「仲良くなっておいたほうが良い」といった意味だけではありません。
自分と同じ「新人」の立場である同僚と、心を開いてコミュニケーションをとることで、
ストレス・プレッシャーへの対処にも繋がるからです。
新人ナースが陥ってしまいがちなのが、同期と自分との比較をして悩んでしまうというパターンです。
「先輩は他の同期の子ばかりを褒める。私って必要ないのかな」
「他の子たちはどんどん上達していくのに、私は何もできないままでどうしよう」
自分だけダメなんじゃないか、ついていけないんじゃないか…そんな気持ちになると、心を閉ざしがちになってしまうものです。
でも、実際は新人の誰もがたくさんの不安を抱えているものです。
仕事帰りに話したり、食事をしたりするなど、同僚と話す機会を作って、積極的に本音を話してみましょう。
自分が悩みを打ち明けると、相手も「実はこんなことで悩んでいて…」と打ち明けてくれ、腹を割って話すことができるはずです。
そうすることで「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ!」と、うまくストレス・プレッシャーに向き合おうという気分にもなれるはずです。
(2)相手の態度は気にせず「内容」だけ受け止める
先輩や上司の中には、新人に対して厳しい言葉を浴びせたり、感情的に責めたりする人もいます。
このような、職場に緊張感やプレッシャーを与えるタイプの先輩が居ると、
新人はミスや指摘を恐れてビクビク仕事をするようになり、かえってミスにつながってしまうことも。
こんな先輩とうまく付き合うには、相手の態度は気にせず「内容」だけを受け止めることです。
怖い先輩でも、内容だけ見てみれば正しいことを言っているな、と思えることも多いはずです。
「またこんな初歩的なミスして!患者さんも迷惑してるわよ。そんなんだからダメなのよ!」
このような怒鳴り方をしてきた先輩がいたとしますよね。
こんな風に怒鳴られたら落ち込むし、動揺するかもしれません。
でも、内容だけ見てみると
・初歩的なミスは繰り返すべきではない
・患者さんの生命とも関わる仕事なのだから、細心の注意をすべき
と、至極納得できる内容です。
このように、指摘の内容だけ受け止めて、相手の態度や言い方は
「そういう言い方の人だから仕方ないな」と受け止められるようになれば、
プレッシャーを乗り切ることもできるはずです。
(3)自分に合った気分転換の方法を見つける
新人ナースが陥りがちなのが「五月病」。
入職して忙しく研修をこなし、やっと慣れてきたときにふと我に返り
「私がやりたかった仕事は本当にこれなのかな」
「みんなより自分は劣っている気がする」
「やる気もなくなっちゃった。こんな自分はだめだな」
と落ち込んだ気持ちになってしまうのが「五月病」です。
つい自分を責めてしまう気持ちはわかりますが、このよう悩みは誰もが通り、いつかは解決するもの。
自分はダメだ、と責めてしまうのではなく、自分に合った気分転換の方法を見つけて、息抜きをしましょう。
友達とのおしゃべり、ショッピング、自分磨き、ライブに行く…何でもいいです。
新しい環境で仕事を始めると、緊張状態が続いて心は疲れてしまいがち。
リフレッシュしてまた頑張るためにも、息抜きは重要です。