看護師という仕事に限らず、どの職業につている人にとっても、
退職する際は、トラブル無くスムーズに辞めていくのが理想です。
しかし、看護師の場合、業界全体で人手不足の傾向にあるため、
どうしても退職の意向を示した際に「引きとめ」にあってしまうことも少なくありません。
引きとめにあってしまった場合、上手に交わして断らなければなりませんが、
断り方によっては悪い印象を残してしまい、
後々トラブルとなってしまう可能性もあります。
ここでは、看護師が円満退職をするために抑えておくべきポイントについてご紹介します。
■「退職理由」に関するマナー
退職の意向を伝える際に、その理由がどういったものであるかは非常に重要です。
基本的に退職願を提出する場合は、理由については細かく述べる必要は無く、
「一身上の都合」とひとくくりにしてしまって問題ありません。
ただし、上司に退職の意向を伝える際には理由を説明するのが基本です。
退職理由の内容によっては、上司が引き止めに出ることもあるので、
角が立ちにくく、引き止められにくい退職理由についてご紹介します。
【結婚、妊娠、出産】
まずは結婚や出産を機に、退職を申し出るパターンです。
結婚や出産をきっかけに家庭に入る女性は今でも一般的ですので、
受け入れられやすい退職理由です。
しかし、職場によっては結婚後も仕事を継続して欲しいと頼まれたり、
出産後の復帰を期待されます。
その場合の断り方としては、
「主人や家族の意向もあり、家庭の事情がら勤務を続けるのが難しい」
といったように伝えると、認めてもらいやすくなります。
いずれにせよ、結婚が決まったり妊娠が発覚したりしたら、
なるべく早いうちに上司に退職の意向を示しておくことが重要です。
【介護や家業の手伝い】
両親の介護や、家業の手伝いなど、
本人の意向というよりは、家庭の事情により退職せざるを得ないようなケースの場合には、
強い引止めにあうことはないでしょう。
その際には、「自分自身としては仕事を続けたいが、環境的に難しい」
といったことも付け加えておくと、上司にも悪い印象は与えないでしょう。
【遠方への転居】
最後に、遠方への引越しにより、通勤が困難になるのを理由とするパターンです。
通勤が困難といえるレベルは、通勤時間が2時間以上かかる場合です。
2時間以内の場合、時短勤務などを持ちかけられる可能性があります。
その際、通勤における交通費に自己負担が加わる場合は、
それを理由に上司の引止めをかわすのも良いでしょう。
とにかく長時間の通勤がどれだけの負担になるのかを説明して、
受け入れてもらう必要があります。
■看護師が退職の意向を伝えるのに最適なタイミング
退職を希望している看護師にとって、
退職の意向を伝えるタイミングを決めるのは、非常に難しいところですが、
結果から述べますと、退職の意向が定まった時が最適なタイミングといえます。
退職の意思が決まっているのにもかかわらず、
わけも無く先延ばしにしてしまうと、
後任の看護師の手配や引継ぎの準備の時間が足りなくなるなど、
かえって職場に迷惑をかけてしまい、円満退職から遠ざかってしまいます。
退職を切り出すタイミングとしては、
ケース別に異なってくるのでそれぞれご紹介します。
【結婚、妊娠を機に退職するケース】
まずは結婚が決まった時点で上司に報告し、
その時点で退職の意向を伝えておきましょう。
万が一引き止めにあった場合は、その場で頑なに拒否するのではなく、
一旦家庭に持ち帰って、家族と相談した上で、
退職の意向に変わりが無いことを伝えましょう。
次に妊娠の場合ですが、こちらも発覚した時点ですぐに報告し、
その時点で退職を考えていることを上司に伝えましょう。
また退職の意向を伝える際には、
いつまで勤務するつもりであるかも伝えておきましょう。
結婚や出産の日程が既に決まっている場合には、
そのことも早めに伝えておくと、希望した時期に退職しやすくなります。
【信頼できる上司がいるケース】
もし信頼できる上司がいる場合には、
退職願を提出する前の段階で、退職を考えていることを前もって相談すると良いでしょう。
ワンクッション置いて退職願を出すことで、受け入れてもらいやすくなります。
【信頼できる上司がいないケース】
もし信頼できる上司がいない場合には、
退職の意向を伝えるのは転職先を決めてからにしましょう。
すでに転職先が決まっているため、退職は免れられないということを伝え、
退職時期を決めましょう。
またその際には、就業規則に基づいて、
定められた期間よりも早めに退職の意向を伝えることがポイントです。
【夫の転勤が退職理由のケース】
夫の転勤が退職理由となる場合、
転勤が決まってから実際に異動するまでの期間が短いことが多いので、
分かり次第すぐに上司に報告しましょう。
とくに夫が転勤族の方は、
転勤の可能性が浮上した時点で、前もって職場に伝えておくとスムーズに退職しやすいです。
【就業規則の確認】
退職の意向を伝える際は、
必ず各々の職場で定められた就業規則にしたがって、早めに行動に移しましょう。
一般的に退職希望日の1ヶ月前までに申し出るように定められていることが多いですが、
出来れば更にその1ヶ月前、退職希望日の2ヶ月前には伝えておくのが理想です。
退職者が出た場合、後任者を用意したり、シフトの変更が発生するため、
なるべく早い段階で退職の意思を伝えておくと、職場にも迷惑がかかりにくいです。
また直前に退職願を申し出た場合、
引止めによって希望の退職日より延びてしまうこともあるので要注意です。
とくに看護師が不足している病院やクリニックなど、
しつこい引止めがある職場においては、
退職願を出したとしても受け入れてもらえないケースもあるため、
そういった引きとめによるトラブルを予測して、
早め早めに行動に移しておくことが必要です。
また、医療機関によっては、就業規則により退職願の提出時期ではなく、
退職の意思を伝える時期を定めているケースもあるため、
勤務先の就業規則をきちんと把握しておきましょう。
■最初に退職の意向を伝えるべき人物
退職の意思が固まった際に、
果たして最初に誰に伝えたら良いのだろうかといった悩みが浮上してくる事かと思います。
【退職の意向を伝える順序】
一人目:所属部長の師長
まず最初に退職の意向を伝えるべき人物は、
直属の上司である所属部長の看護師長です。
このときのタイミングとしては、
退職の意思が決まった時点からなるべく早い時期が良いでしょう。
二人目:主任
次に伝えるべき相手は、主任です。
所属部長の看護師長の了承を得た後に報告しましょう。
そして最後に、退職が正式に決まった後に周囲の同僚に伝えましょう。
目安としては退職日の2~4週間前が良いでしょう。
【看護師が退職するにあたっての注意点】
円満退職を目指す看護師が気をつけておきたいのは、
仲の良い同僚に退職の意思があることを伝えてしまうことです。
退職の話題は噂になりやすく、簡単に周囲に広まってしまい、
最終的に上司である看護師長の耳にまで入ってしまう恐れも少なくありません。
問題なのは、上司に退職願を申し出る前に、
間接的に上司の耳に退職の噂が入ってしまうことです。
それにより上司の反感を買ってしまい、
円満退職からは遠ざかってしまいかねません。
そのため、本当に信頼できる同僚以外には、退職の話はしないのが無難です。
つい口を滑らせてしまいそうになるかもしれませんが、十分に注意を払ってください。
退職の意向を伝える順番は、それだけデリケートな問題なので、
上司にも相談しながら話を進めましょう。
■引継ぎ時の注意点
退職をする際には、必ず引継ぎが発生します。
引継ぎは、ただ資料を用意したり、口頭で簡単に伝えて完了するものではありません。
円満退職を行うために必要な引継ぎのポイントについてご紹介します。
【退職が職場に公表されてから】
退職の意向が承認されると、気持ちがはやり、
早く次のステップに進みたいと思うかもしれませんが、
そのような思いから焦って引継ぎを始めるのは良くありません。
必ず退職が正式に決定し、職場全体に公表されてから行うようにしましょう。
【シフトを考慮した引継ぎスケジュールを立てる】
看護師のシフトは夜勤が入ってくるため、非常に不規則です。
引継ぎをするにも、シフトによってはお互いのスケジュールが合わず、
スムーズに引継ぎが行えない可能性もあります。
その際は、退職に発表時期を早めてもらえるように上司に相談すると良いでしょう。
【引継ぎ資料の用意】
勉強会の担当や、プリセプターの仕事がある場合には、
スムーズな引継ぎを行うためにも、予め資料の準備をしておくと良いでしょう。
任されている仕事は全て完了させ、仕事が残らないように調整しましょう。
【多忙で時間がない場合】
看護師は勤務時間も不規則で、仕事そのものも非常に多忙です。
そのため退職日までに引継ぎを終えることが出来ないというケースも起こり得ます。
万が一、勉強会や委員会などの仕事が残っている場合は、
看護師長に相談して後任者を早めに決めてもらうと良いでしょう。
そして委員会の中心人物に退職することが伝わるようにしましょう。
【万が一トラブルが発生した場合】
退職が公表されてから退職するまでの期間に、
嫌がらせをされたり、悪口を言われたりすることもあります。
非常に居心地の悪い思いをするかもしれませんが、退職までは残り僅かなので、
割り切って最後まで笑顔で勤め上げましょう。
とくにこの最後の期間は、いつも以上に丁寧に、
ミスなく仕事をすることを心がけると良いでしょう。
もう辞めるのは目前ですから、仕事に対する情熱も薄れてしまっているかもしれませんが、
かといって適当に仕事をしていたは周囲の反感を買ってしまいます。
そのような状況下でもきちんと仕事をしていれば、
上司が嫌がらせをしてくる看護師に注意をしてくれることもあるでしょう。
■退職時の挨拶について
退職時における挨拶は、今後の印象を大きく左右する重要なステップです。
挨拶をする相手と御礼の品について、
基本的な退職時の挨拶のマナーについてご紹介します。
まず挨拶の範囲ですが、病院の規模や勤続年数によって異なってくるため、ケース別に紹介します。
【規模が大きい場合(大学病院・総合病院など)】
大学病院や総合病院など、勤務先の規模が大きい場合は、
基本的には、所属していた部署と総務だけで問題ありません。
看護部長や院長への挨拶は、勤務年数やそれぞれの病院によって異なってくるため、
看護師長に事前に確認しておくことが望ましいです。
特に看護部長に関しては、会議や来客の頻度が多いため、一般的に多忙です。
看護師長に相談をして、挨拶のアポイントを予め取っておきましょう。
また看護部長への挨拶は看護師長と一緒に行くのが一般的です。
【小規模な職場の場合】
勤務先の規模が小規模の場合、
様々な部署が連携して、アットホームな雰囲気であることが多いです。
その場合には、お世話になった関係部署それぞれに挨拶に行くのが一般的です。
またその際には、看護師長を伴わずに一人で行くケースが多いようです。
病院の規模に関わらず、直属の上司ではない管理職の上司の中には、
挨拶に来なかったことを快く思わない人もいます。
他部署に挨拶に行く際には、なるべく全員がいるときに挨拶が出来るように、
シフトを確認しておくと良いでしょう。
【患者への挨拶】
自分が担当していた患者には、担当から外れることを伝え、
退職後の後任の担当者を紹介しておくのが一般的です。
患者への挨拶のタイミングに関しては、患者の病状によって異なるため、
あらかじめ看護師長に相談して日程を決めておくと良いでしょう。
【御礼の品について】
挨拶の際に、御礼の品として菓子折りを持っていくことはマナーとして一般的ですが、
渡す範囲は病院の規模によって異なります。
病院の規模が大きい場合は、
基本的に所属している部署と、総務などの事務方のみでよいでしょう。
一方病院の規模が小さい場合には、
所属部署以外にもお世話になった各部署に菓子折りを持っていくケースもあります。
また上司に個別に菓子折りを渡す際には、後日自宅に届けるのが良いでしょう。
■奨学金や寮について
病院から奨学金が出ていた場合、入職時の契約書類を確認し、
返済免除期間の期間について確認しましょう。
返済免除期間を満たしていない場合は、返済の義務が生じますが、
在職期間によって返金額がかわってくるケースがあります。
また返済方法についても、病院によって一括返済と分割返済の場合があるので、
あらかじめ担当者に確認しておきましょう。
病院の寮に入っていた場合には、就業規則によって退寮時期が定められているか確認し、
また定められた期日より退寮が遅れる場合には、総務などの事務に相談しておきます。
また入寮時に契約書を交わしていることもあるので、
退寮に関する契約内容を忘れずにチェックしましょう。