ナースとして働く上で求められるのが「接遇マナー」です。
患者さんやそのご家族とも接する機会の多いナース。
立ち振る舞いや表情、話し方など、良いマナーをもって接することで、患者さんやご家族に安心感を与え、信頼関係を構築することに繋がります。
では、具体的にどんなことに気を付ければよいのでしょうか?
今回は、新米ナースが知っておくべきマナーのポイントについてまとめました。
①身だしなみ
②表情や立ち振る舞い
③挨拶とおじぎ
④言葉遣い
⑤院内のマナー
⑥電話対応
の6つに分けて紹介します。
目次
【①身だしなみ】
人の第一印象を決める上で、見た目は最も大きな要素だと言われています。
患者さんやご家族と多く接するナースは、病院の顔といっても過言ではありません。
病院によって服装は違えど、共通して言えるのは「明るく爽やかな印象」の身だしなみがベストだということです。
ヘアスタイルや髪色、メイクなどは病院によって基準が異なりますが、どんな病院でも、明るく爽やかな格好が求められます。
さらに、ナースと言う仕事の特性上
・清潔・衛生的な状態を維持でき、感染のリスクが低い格好
・処置をスムーズにでき、患者さんや自分の安全を守ることができる格好
というのも重要です。
【②表情や立ち振る舞い】
コミュニケーションには、2種類あります。
1つ目はバーバル(言語的)コミュニケーション。会話など言語によるコミュニケーションを指します。
もう1つはノンバーバル(非言語的)コミュニケーション。態度やしぐさ、表情など、言葉によらないコミュニケーションを指します。
コミュニケーションの受け手は、見た目による印象を強く受けます。
つまり、ノンバーバルコミュニケーションは非常に重要で、立ち振る舞いや表情などで印象は大きく左右されるのです。
患者さんやそのご家族に接する際心がけるべきポイントは、以下の3点です。
(1)笑顔
患者さんやそのご家族は、不安を抱えながら病院を訪れます。
そんな気持ちを和らげるためにも、ナースが笑顔で接することはとても重要です。
優しいまなざしでほほ笑むことで、相手に安らぎを与えます。
いくら忙しくても、険しい表情では居ないこと!ナースがそのような表情をしていると、患者さんやご家族の不安を増長させてしまいます。
(2)アイコンタクト
しっかりとアイコンタクトを取りながら話すと、相手に落ち着いた印象と信頼感をもたらします。
目を合わせない、うつむきがち、きょろきょろとしているなどといった態度には注意。相手を不安な気持ちにさせてしまいます。
(3)スマートでてきぱきとした立ち振る舞い
しゃきっとした姿勢でてきぱきとした対応。
このような立ち振る舞いをすることで、相手に安心・誠実な対応をしてくれそうといった印象をもたらします。
猫背や肩が下がっているなどは、どことなくだらしなく、頼りなさそうな印象になってしまいます。
また、腕組みやせかせか忙しそうに振舞うのもNG。高圧的に見えるため、悪い印象を与えます。
【③挨拶とおじぎ】
挨拶とおじぎをする際に、ちょっとしたコツがあります。それは「語先後礼」です。
これは、挨拶を先にして、その後におじぎをするという挨拶の方法です。
挨拶とおじぎを同時にすると姿勢が下向きなので言葉がこもってしまいます。
しかし「語先後礼」の場合は挨拶を発してからおじぎするため、相手に挨拶がきちんと伝わります。
また、この方法のほうがより丁寧な印象を与えます。
さらに、おじぎの角度にもポイントがあります。
おじぎは、TPOに合わせて使い分けるとより良いのです。主には以下の3つです。
(1)一般的な挨拶の場合
「ありがとうございます」
「よろしくおねがいします」
など、一般的な挨拶の場合、おじぎの際の角度は30度で行います。
(2)軽い挨拶の場合
院内で何度も会う上司や同僚、頻繁に挨拶を交わす患者さんやご家族には、会釈でよいでしょう。
「こんにちは」「おはようございます」「失礼いたします」といった挨拶の後に、
15度くらいのおじぎをしましょう。背中をぴんと伸ばしたまま、軽く胸を倒すようにしておじぎします。
(3)お詫びや、患者さんが亡くなられた場合など
このような場合は、最敬礼といって、最も丁寧なおじぎの仕方を行いましょう。
この場合のおじぎの角度は45度です。
この3つの他にも、エレベーター内の挨拶などで使える「目礼(アイコンタクトを取り、軽く目を伏せてする挨拶)」などもあります。
【④言葉遣い】
特に新人ナースの場合、今まで正しく敬語を使って人に接する必要が無かった人も多いのではないでしょうか。
敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があります。
これを理解して正しく使い分けないと、相手に悪印象をあたえかねません。
それぞれの使い分けについては、以下のとおりです。
(1)尊敬語
先輩や患者さん、そのご家族など、目上の人やその動作に使う敬意の言葉
「椅子に“お掛けになって”お待ちください」など。
(2)謙譲語
自分の動作についてへりくだって表現し、相手を立てる言葉。
「10分後に再度“伺います”」など。
(3)丁寧語
相手に対し、丁寧に述べる言葉。「です」「ます」「ございます」等。
これを正しく使い分けると、患者さんやご家族からのイメージもぐっと良くなります。
さらにこれらに加え、クッション言葉(緩衝語)というのもあります。
これは、相手に何かお願いするときなどに挟んで使うことで、表現を和らげる効果のある言葉です。
(例)
・書類記入をお願いするとき
「“恐れ入りますが”こちらにご記入いただけますでしょうか」
「“お手数ですが”こちらにご記入いただけますでしょうか」
・相手に話しかけるとき
「“もしよろしければ”お荷物をお持ちしましょうか?」
「ただいまよろしいでしょうか」
・相手を待たせるとき
「少々お待ちくださいませ」
・相手の要望に沿えないときや、断るとき
「“あいにくですが”医師の○○は不在にしております」
「“申し訳ございませんが”ご用意できません」
【⑤院内のマナー】
ナースとしての仕事の上で、院内で患者さんやご家族を案内するといった機会も少なくないと思います。
その際に覚えておくと良いマナーをご紹介します。
案内する際はまず「○階の××室にご案内します」等、相手に行き先を伝えてから案内しましょう。
お客様を案内する際の自分の立ち位置も重要です。
廊下を歩く場合は、相手の2~3歩前方を歩いて案内します。
自分は端を歩き、患者さんやご家族、お見舞いの方が中央を歩くようにしましょう。
階段を上る場合は、相手を先にして自分がその後から続きます。
これは、相手よりも高い位置に立たないようにするためです。なお、階段を降りる際は自分が先に進みます。
エレベーターでの案内の場合、先に誰かがエレベーターに乗っていた場合はその人に対して会釈や目礼をしましょう。
また、患者さんやご家族等がエレベーターのボタン操作を行っている場合は、これに替わって操作を行うようにしてください。
【⑥電話対応】
電話での応対もとても重要です。
お互いの姿が見えない分、より丁寧な受け答えができるよう心掛ける必要があります。
また、電話に出た人は相手から「病院の代表」として評価されます。
新人であろうと関係ありません。
もし失礼な応対をしてしまった場合、病院全体の悪印象にもつながりかねないので、注意が必要です。
電話応対の際おさえておくべきポイントは以下の4つです。
(1)電話がかかってきたら3コール以内に出る
出られない場合は「お待たせいたしました」とお詫びしてから用件に入りましょう。
(2)自分の所属、氏名をしっかり名乗る
「○○病棟の○○でございます」とはっきり所属・氏名を名乗りましょう。
所属と氏名を伝えておくことで、もし相手が再度電話してきた場合でも「○○病棟の○○さん居ますか?」と相手から担当者へ取り次ぐことが可能になるからです。
(3)聞き取りづらい部分は臆せず確認する
相手の言ったことがよく聞き取れない場合もあると思います。
そういった場合に、聞き返すのは失礼だろうとそのまま放っておくのはよくありません。
特に、相手の氏名や会社名など、重要な情報はおさえるようにしましょう。
たまに自分の名前を名乗らずに電話をかけてくる人もいますが、
そういった場合は必ず「失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」と尋ねるようにしましょう。
(4)重要な情報は必ず復唱&メモ
しっかり確認すべきことは、復唱して確認しましょう。
例えば、取次を頼まれた場合は「○○病棟の○○ですね」と復唱して確認します。
また、用件の日時、電話番号の数字、相手の氏名や会社名などは重要な情報です。復唱して再確認し、必ずメモをとりましょう。
これら4つのポイントは、電話を受ける場合についてです。
こちらから電話を掛ける場合は、自分の所属と氏名を伝え、話したい相手を確認してから用件を簡潔に伝えるようにしましょう。